クリス・カイル死の真相に迫る裁判の行方

クリス・カイル死の真相に迫る裁判の行方

 

american sniper

 

 

アカデミー賞6部門ノミネート

イラク戦争に4度従軍した故クリス・カイルが著した自伝

 

名匠クリント・イーストウッドがまた凄い映画を撮りました。

実在のアメリカ伝説のスナイパー、クリス・カイルを描いた

『アメリカン・スナイパー』(原題:American Sniper)が

第87回アカデミー賞作品賞主演男優賞を含む

6部門にノミネートされています。

 

→2月22日【現地時間】結果が出ました。

残念ながら作品賞、主演男優賞は逃しましたが、

音響編集賞を受賞しました。

 

『ミリオンダラー・ベイビー』『許されざる者』『硫黄島からの手紙』

『グラン・トリノ』『ヒアアフター』……。

観る度に締め付けられるような痛みを伴う彼の映画は、

とても素晴らしい映画だと思うけれど、

辛すぎて二度目を観られない。

いつもそんなふうに感じます。

 

 

今回クリントが映画化に挑んだのは、

米軍史上最強とうたわれた狙撃手クリス・カイルのベストセラー自伝。

 

米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員クリス・カイルは

イラク戦争の際、その狙撃の腕前で多くの仲間を救い、

「レジェンド」の異名をとりました。

 

同時にその存在は敵にも広く知られることとなり、

彼の首には懸賞金がかけられ、命を狙われます。

数多くの敵兵の命を奪いながらも、

遠く離れたアメリカにいる妻子に対して、

良き夫であり良き父でありたいと願うクリスは、

そのジレンマに苦しみながら、

2003年から09年の間に4度にわたるイラク遠征を経験。

 

過酷な戦場を生き延び妻子のもとへ帰還した後も、

ぬぐえない心の傷に苦しむことになるのです。

 

 

キャスト:

 

 

帰還兵士の心の闇

アメリカでは『アメリカン・スナイパー』が社会現象を巻き起こすなか、

この映画のモデルとなった英雄の悲劇的な死の真相に迫る裁判が始まりました。

 

狙撃の名手 法廷でモニター画面に映し出された在りし日のカイル Tom Fox-The Dallas Morning News-Pool-Reuters
狙撃の名手 法廷でモニター画面に映し出された在りし日のカイル Tom Fox-The Dallas Morning News-Pool-Reuters

 

『アメリカン・スナイパー』SEALs(海軍特殊部隊)

伝説的な狙撃兵クリス・カイルはイラクから帰還後、

民間軍事会社を経営する傍ら、

PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ仲間の帰還兵を

支援する活動に取り組んでいました。

 

ベストセラーになった回想録の映画化の話が進むなか、

2013年2月2日、当時38歳だったカイルは

テキサス州フォートワース郊外の射撃場で

元海兵隊員のエディー・レイ・ルースに至近距離から撃たれて死亡したのです。

 

事件当時、カイルの突然の死は衝撃を巻き起こしましたが、

犯人の動機など詳細は不明のままで、

イーストウッドもこの悲劇については

エンドロールでわずかに触れているだけです。

 

全米では映画が記録的なヒットとなり、

事件から2年経った今週、

テキサス州スティーブンビルでルース被告(27)の初公判が行われ、

事実関係の一部が明らかになりました。

 

アラン・ナッシュ州検察官は冒頭陳述で、

カイルは背中と脇腹に5発、頭部に1発の銃弾を浴びていたと説明しました。

その場にいたカイルの友人で、支援活動を手伝っていたチャド・リトルフィールドも

ルースに射殺されましたが、

彼は背中と手と頭を撃たれていたということです。

 

犯行時、ルースがドラッグとアルコールの影響を

受けていた可能性があることも明かになりました。

「(刺激を強めるために死体防腐剤に浸けた)いわゆる濡れたマリファナ煙草を吸い、

ウィスキーを飲んでいた」と、ナッシュ検察官は陪審団に語ったそうです。

 

弁護側は、ルースはPTSD患者で、

自分のしたことが分からない状態だったと主張。

これに対して、ナッシュは

「被告は(犯行後、姉に)2人を殺害したこと、その朝ドラッグを使用し、

アルコールを飲んだことを打ち明け、

悪いと知りながら犯行に及んだことを認めていた」と反論しました。

 

弁護側は、犯行時にルースは一時的な心神喪失意に陥っており、

責任能力がなかったという主張を曲げませんでした。

「この悲劇が起きたとき、エディー・ルースは心神喪失に陥っていた。

悪いことをしているという意識がなかったばかりか、

身の危険を感じて2人を殺さなければならないと思い込んでいた」と、

ティム・ムーア弁護士は陪審団に訴えました。

 

ムーア弁護士が被告の心神喪失の証拠として挙げたのは、

カイルがリトルフィールドに送ったメールです。

3人で射撃場に向かう途中、

カイルはルースの言動がおかしいことに気づき、

「こいつは完全に狂ってる」とリトルフィールドに警告していたのです。

 

これに対し、ナッシュ検察官は

被告に障害があったとしても、

精神障害によって必ずしも善良な市民である能力や善悪を判断する能力、

法律を遵守する能力が失われるとは限らない」と反論しました。

 

カイルの妻ターヤも証言台に立ち、

亡き夫との関係や事件当日に交わしたやりとりを証言しました。

地元メディアによると、ターヤはその日、

カイルがルースとリトルフィールドと

一緒にいるときに送ってきた複数のメールから、

夫がイライラしていると感じたといいます。

 

陪審団が評決を下すまで今後何週間か、

法廷で被告の刑事責任能力の有無が問われることになります。

有罪になれば、ルースは終身刑を科されることになるのでは?

というのが概ねの予想のようです。

 

原作を読む

映画の日本公開が迫る今、

原作を先に読んでおこうかという気になっています。

映画が出たお陰で、エディションが新たになりました。

原語【英語】も含めて、読む価値はあると思います。

 

アメリカン・スナイパー

 

 

American Sniper [Movie Tie-in Edition]: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History

 

いずれにしてもこの映画『アメリカン・スナイパー』は、

2015年1月までに2億1700万ドルの興行収入を記録し、

プライベート・ライアンの2億1650万ドルを超えて

アメリカで公開された戦争映画史上最高の興行収入額となっています。

 

共和党支持者として知られるクリント・イーストウッドですが、

イラク戦争については一貫して反対の立場を取っています。

 

コメントでは

「『アメリカン・スナイパー』は職業軍人や、

海軍の職員、何らかの事情で戦地に赴いた人々を描いている。

戦場では様々なことが起こるという見方以外に、

政治的な価値観は反映されていない。」

としながらも、

そんな彼が全身全霊を込めて戦争の是非を問う、

それがこの『アメリカン・スナイパー』という映画なのです。